【ずるい活版印刷】凹まし理論

レタープレスで紙を凹まして印刷する場合おすすめするのは0.4mm以上の厚みの紙を「つぶす」ように印刷する方法です。
特にクッション紙の0.8mm程度の厚さで刷った凹み印刷が好きです。このブログの事例ではこれまでクッション紙0.8mmばかり使って印刷例を掲載しております。

今回は厚みの無い(0.4mm以下)の紙でも凹まし具合を出しながら印刷するという方法を紹介します。

テキンやアダナでは印刷紙の背面に紙を数枚重ねて印刷具合を調整する「胴張り」や「パッキング」といわれる結構重要な調整箇所があります。

くるくるレタープレスや小さな活版印刷ではこの部分を採用していないので、あまり知られていない所です。

日本の活版では凹まさない活版であったためこの「胴張り」は、ちょうどはんこを押すときにカスレが出ないように紙の下に敷く「捺印マット」のような役割のものになります。
印刷面積が大きくなるほど重要で難しい調整になってくると思います。

海外のレタープレス(アダナ等)では凹ますスタイルもあり「パッキング」はそれぞれに工夫がされています。
下側がゴムになった絨毯マットの薄めのものをゴム面が印刷紙の背面にくるように設置されていたり、アダナ印刷機の説明書には「新聞紙6枚」を使う等書いてありいろいろと方法があります。

今回は「ずるい活版印刷」バージョンなので、「カードケース」にその「胴張り/パッキング」を設定して印刷します。

カードケースの片面側に今回は薄いボール紙(たまたま不要だった紙)を使っています。
紙の素材はまずはなんでもいいと思います。
0.4mm以上の厚紙は紙自体をつぶして印刷するので、背面が硬い状態でよいのですが、0.4mm以下の紙の場合「裏側に飛び出す(エンボス)」状態になる印刷を行います。
その「飛び出す」部分を受ける程度の硬さと厚みで設定するように作ります。

(捨てかけのボール紙)を3枚仕込んで作りました。

印刷紙を設置する為の「戸当たりテープの囲い」と上側に樹脂版(背面両面テープ)貼りでセット完了。

インクを付けて「ずるい活版印刷機」を通して行きます。

 

印刷面の状態は

ほぼ厚紙つぶし印刷時と同じような仕上がりで印刷出来ています。
ただ、背面側が飛び出し(エンボス)が出来ています。

また、「胴張り/パッキング」の方も凹みが出来ています。

厚みがありすぎると特に名刺の場合何十枚も持ち歩くのに邪魔になってしまうし、人に配った場合にも厚みを遠慮した方が良いと思うので、この方法を使って薄めの紙でも凹まし印刷の名刺を印刷する事が出来ます。

以前は「活版印刷とレタープレス」「活版印刷と凸版印刷」と区別されていましたが、現在「活版印刷」には幅広い手法を含む形で認知され広がって来ております。
かたくなに「本当の活版印刷」「本来の活版印刷」(凹ませない)を主張し続けていたら活字も含めて消えてしまったかもしれません。

活版人口がもっともっと増えて来ると昭和の時代のスタイルを追及して維持しようという人も出てくるかと思います。そして活字やテキンにも種類が増えたり製造が復活して行くこともあるかもしれません。

今は「活版印刷」は幅広く色々な手法を輩出させ、または進化させ、未来につながる発展をする事が重要だと思います。

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